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  シンポジウム「東洋学・アジア研究の新たな振興をめざして」Part IV

                               東洋学・アジア研究連絡協議会会長 斎 藤  明
(趣旨)
  日本の東洋学・アジア研究の衰退の危機が指摘されて、すでに久しい時間が経過いたしました。その上、昨年6月には文科大臣より、人文・社会科学系の学科・学部の統廃合を進めるという通知も出され、事態は一層深刻の度合いを増しています。  このような危機の到来は、東洋学・アジア研究分野の研究者一人一人に対して、自己の学問のあり方を根本的に再検討しつつ、この危機を克服し関連する学問の新たな振興をめざすべきことを迫るものであります。それと同時に、自己の学問的ディシプリンや所属する研究機関・学協会の相異を超えて、多くの研究者が相互に連携・協同しあいながら、これに立ち向かっていくべきことを教えてもいます。  今日、このような危機を克服する方策として、以下のことが重要ではないかと思われます。日本の東洋学・アジア研究は、近代的学問を相対化して、東洋・アジアの文化的諸価値を、時空を超えた世界の普遍的真理という一色の絵具で塗りこめないという長所を持ちつづけてきました。こうした長所を活かしながら、
一、21世紀に生きる人間としての観点に立って、東洋・アジアにおける個別的な文化現象の諸価値を内在的に再構成すること。
二、こうした個別的な文化研究の積み重ねを総括する中で、東洋・アジアから世界に向かって発信する新たな人間科学 (Human Sciences) を興こすこと。
これらを実現する道を切り拓いていくことが重要なのではないでしょうか。
 私たち、約40の学協会は、2004(平成16)年9月、東洋学・アジア研究連絡協議会を設立しました。その目的は、東洋・アジアの諸文化を各種のディシプリンをもって研究する学協会が、将来におけるこの学問の一層の振興を図り、そのために相互の学術交流と連絡協議を行い、また国際的な東洋学・アジア研究の動きにも対応すること、などにありました。
 東洋学・アジア研究連絡協議会は、以上の設立趣意と現状への課題意識に基づき、模索のための具体的な活動の一環として、2013(平成25)年12月、シンポジウム「東洋学・アジア研究の新たな振興をめざして」を開催し、一昨年および昨年の12月にPART IIとPART IIIを開催いたしました。今年度はその趣旨を引き継ぎPART Ⅳとして、下記の要領でシンポジウムを開催いたします。
 シンポジウムの最後に、私たちと課題意識を共有する日本学術会議の「アジア研究・対アジア関係に関する分科会」より、今年度とりまとめる「提言: 新たな情報化時代の人文学的アジア研究に向けて」についての中間報告をも受け、総括的な討論を行います。
 シンポジウムの講師は、近年、各分野において活発な研究活動を展開して新たな地平を切り拓こうと努めておられる先生方にお願いしました。
 研究者・学生・市民のみなさん、お誘いあわせの上、ふるってご参加下さい。

   シンポジウム「東洋学・アジア研究の新たな振興をめざして」PART IV
            ―新資料が拓くアジア研究―


日時:2016年12月17日(土)13時30分~17時
会場:東京大学法文2号館1番大教室 (文京区本郷)

開会挨拶:斎藤 明(国際仏教学大学院大学教授、東洋学・アジア研究連絡協議会会長)
総合司会:堀池信夫(筑波大学名誉教授)
報告:
 井手誠之輔(九州大学大学院人文科学研究院教授):「作品誌の観点と大徳寺伝来五百羅漢図」
 平勢 隆郎(東京大学東洋文化研究所教授):「古文字資料の発見と伝統学術」
 松田 和信(佛教大学仏教学部教授):「アフガニスタン写本と仏教文献研究」
 久保  亨(信州大学人文学部教授):「第23期日本学術会議・アジア研究・対アジア関係に関する
        分科会『提言:新たな情報化時代の人文学的アジア研究に向けて』の骨子と背景」
閉会挨拶:池田知久(東京大学名誉教授、東洋学・アジア研究連絡協議会顧問)

                 予約不要・入場無料

〔報告レジュメ集〕
井手誠之輔「作品誌の観点と大徳寺伝来五百羅漢図」
 ローカルであると同時にグローバルな視点に開かれた作品研究の一例として、大徳寺伝来五百羅漢図の場合を採り上げる。この羅漢図は、南宋における誕生の後、故郷を離れて中世の鎌倉、近世の京都へと旅し、近代の欧米では中国絵画の代表作として迎えられた。さまざまな異文化間における時空の旅を検証しながら、仏画制作と地域社会、外来美術の受容、東西美術の比較考察などの今日的な美術史学の課題を探っていくことにする。

平勢 隆郎「古文字資料の発見と伝統学術」
 19世紀末の甲骨文発見以来、中国古代の研究は、続々と世に出る出土遺物に対処してきた。これら出土資料は、新しい知見をもたらすだけでなく、伝統学術をあらたな視点で見直す契機にもなっている。ただ忘れてならないのは、文字改革のために注目された奇字の字書が、竹簡解読に役立つなど、皮肉な結果が存在することである。これまでつちかってきた学術の基礎が、刺激を得てあらたな様相を呈することの意味を考えねばならない。甲骨文解読が、宋代以来の青銅器銘文研究を基礎に進んだことの意味も同じ土俵にある。

松田 和信「アフガニスタン写本と仏教文献研究」
 
1990年代の中頃、アフガニスタンのバーミヤンやガンダーラから大量のインド語仏教写本が発見され、現在世界各地で解読研究が行われている。写本類は、紀元1世紀から8世紀に遡る様々なインド系文字を用いて、貝葉、樺皮、羊皮に書写されたガンダーラ語あるいはサンスクリット語の仏教文献であったが、その総数は小さな断簡も含めて数千点にのぼった。新発見の仏教写本を概観して、これが今後の仏教研究にどのような影響を与えるか分かり易く解説する。

久保  亨:「第23期日本学術会議・アジア研究・対アジア関係に関する分科会『提言:新たな情報化時代の人文学的アジア研究に向けて』の骨子と背景」
 第23期日本学術会議に設けられた言語・文学委員会・哲学委員会・史学委員会・地域研究委員会合同のアジア研究・対アジア関係に関する分科会では、現在「提言:新たな情報化時代の人文学的アジア研究に向けて」をとりまとめている。ここでは、その提言の背景と狙い、ならびに骨子を紹介するとともに、東洋学・アジア研究の現況と近未来像をめぐり、忌憚のない意見交換を行いたい。


問い合わせ:東洋学・アジア研究連絡協議会事務局 (一般財団法人東方学会内:
  千代田区西神田2-4-1、Tel.03-3262-7221、E-mail: iec@tohogakkai.com)