一般財團法人東方學會 本文へジャンプ

                 若手研究者の研究会等支援事業


 この事業は、東洋学・アジア研究に従事する若手研究者の企画する研究会・講演会・シンポジウム等 (以下、研究会等という) の開催を促進し、斯学の発展・普及に資することを目的とし、その開催経費の一部を助成するものです。

 *平成25〈2013〉年度開催分(平成25年4月1日~26年3月31日)の追加募集を行います。
  締切は、平成25年5月31日です(消印有効)。


 実 施 要 項


1.内容・募集
 ・次年度(4月1日から翌年3月末日)に開催する研究会等の開催経費の一部として、1件5万円、年間10件を限度とする支援を行う。
 ・募集は、ホームページおよび 『東方学会報』 誌上において行う。
 ・採用にあたっては、学際的な企画を優先する。
 ・採用された企画に限り、東方学会会議室 (スクール形式で最大30名) を無償で使用することができる。

2.資格・条件
 ・申請者は、東方学会会員で申請書提出時に45歳未満であること。 ・同一申請者の申請は、1年1企画に限る。
 ・研究会等の参加者が5名以上で、複数の機関の研究者で構成されていること。
 ・研究会等の終了後1カ月以内に報告書を提出すること (800字以内、『東方学会報』に収載する)。

3.申請・審査
 ・次年度開催予定の研究会等の内容 (1. 会議の名称、2. 趣旨、3. 開催日時、4. 会場、5.参加予定者 〔所属も明記すること、多数の場合は5名程度〕、6. 他の機関からの助成金等の有無〔助成金の有無は採否には関係しない〕、7.経費の概算 〔会場費、交通費、資料代、飲食費等の項目を計上すること〕) を、A4用紙1枚以内にまとめ12月末日まで (消印有効) に事務局に提出すること (Eメール可)。
 ・審査は、2月開催の理事会において行い、2月中に採否を通知する。採用された企画には研究会等の開催後1カ月以内に報告書の提出を待って申請者の指定する銀行口座に振り込む。
 ・採用決定後、予定していた研究会等が中止あるいは申請内容に変更が生じた場合は、速やかに事務局に連絡すること。



助 成 実 績

〔平成24年度〕
 1. ワークショップ「中国語圏のエスニック・マイノリティ―近現代における社会変化の諸相」(申請者:
   松岡格)
   活動報告(『東方学会報』No.103)
     2012年7月21日(土)の14時から、東方学会会議室にて、本事業の支援のもと、ワークショップ
   「中国語圏のエスニック・マイノリティ―近現代における社会変化の諸相」が開催された。エスニック・
   マイノリティ研究会の主催するワークショップとしては、第2回に当たる。同研究会は「エスニック・マイ
   ノリティ」とは何なのか、学術的に議論していく場として2010年11月に創立され、書評会、研究報告、
   講演会などの活動を行ってきた。 ワークショップ第1セッションでは、児倉徳和「言語から見る『シベ語
   と漢語』の変容」、バートル「モンゴル族の口承文芸についての考察―語りの現代的実践」、林麗英「台
   湾原住民族意識と文化志向性の接合点―アワ栽培の復興プロジェクトを中心に」、松岡格「ジンポー
   族の20世紀―首長制社会とその再編」など四本の研究報告が行われ、これに対して辻河典子氏、土
   肥歩氏から論評と質問がなされた。 第2セッションでは、小林亮介「『ロパ族』・『モンパ族』と近現代―
   中国・チベット・インドの狭間で」、山﨑典子「近代中国におけるイスラームと『民族』概念―ユーラシア
   地域研究からの一試論」、持田洋平「マジョリティとマイノリティの間で―華人からみるシンガポール、
   東南アジア」など三本の研究報告が行われ、これに対して遠藤嘉広氏、香坂直樹氏から論評と質問
   がなされた。 どちらのセッションでも、フロアからも多くの意見が出され、充実した議論が行われた。今
   回、中国語圏におけるマイノリティに関して様々な角度から問題提起が行われたが、特に報告者各自
   が示す具体事例から、国家・地域・言語・民族に関わる認識の境界線が多様なアクターによって設定・
   再設定されていること、そうした境界線をめぐる権力関係も重層的なものとして存在していること、マジョ
   リティとマイノリティの間の境界線も操作可能であること、などが指摘・認識されたことが重要な成果で
   ある。

 2.「.第3回若手チベット学研究者国際会議」(申請者:岩尾一史)
   活動報告(『東方学会報』No.103)
     2012年9月3日から7日までの5日間、神戸市外国語大学にて第3回若手チベット学研究者国際
   会議(The Third International Seminar of Young Tibetologists、以下ISYT)が開催された。ISYTは博
   士論文提出後ないしは研究職に就いてから6年以内の「若手」研究者のための学会である。国際チ
   ベット学会(International Association of Tibetan Studies)が大規模化するのに伴い、若手に発表の
   機会を与えるという使命の下に創設され、2007年にロンドンで第1回、2010年にパリで第2回、そし
   て神戸で第3回会議が開催されることになった。今回の会議では、岩尾一史(神戸市外国語大学)、
   熊谷誠慈(京都女子大学)、西田愛(神戸市外国語大学)、山本明志(大阪大学)の4人が組織委員と
   なって準備にあたり、そのうち岩尾が代表を務めた。会議参加者数は前2回と比較して大幅に増え、
   口頭・ポスター発表者を合わせて73人で、オブザーバー参加が20名である。参加者の国籍は、欧
   米各国、中国、韓国、台湾、インドなど17カ国に及んだ。9月3日午前に開会式と御牧克己京都大学
   名誉教授による講演が行われた後、同日午後から6日まで口頭発表が行われ、宗教、歴史、言語、
   文化人類学など多分野の発表が行われた。また、今回は初の試みとしてポスター報告が5日に開催
   された。7日は全体運営会議とエクスカーションが実施された。発表はいずれもレベルが高く、加えて
   参加者が若手主体ということもあり、国籍・分野の垣根を超えて率直かつ真摯に意見を交換すること
   ができた。また特筆すべきは日本人研究者の活躍で、我が国のチベット学の水準を示すことができた
   と思う。さらに学問的側面のみならず、懇親会やエクスカーションなどを通じて参加者相互は親密度を
   深めることができた。本会議で培われた国際的紐帯が、今後の国際的な研究協力の核となることは間
   違いないであろう。会議のさらなる詳細はホームページ(http://www.isyt.org/)を参照されたい。ホーム
   ページからは発表概要集もダウンロード可能である。さらに、2014年には会議の発表成果をまとめた
   論文集を神戸市外国語大学から出版する予定である。なお、この度の助成金は会場費、資料コピー代
   などに使わせていただいた。関係の先生方には、委員を代表して御礼申し上げます。

 3.「唐宋期における令の性質についての基礎的研究」(申請者:吉永匡史)
   活動報告(『東方学会報』No.103)
    唐は律令制が最も高度に完成された時期であり、古代日本はこれを継受して独自に律令を撰定した
   ことから、唐令研究は中国史・日本史双方の研究者によって進められてきた。そして1999年に中国
   寧波の天一閣で北宋天聖令の残本が発見され、唐宋令の研究は日本・中国・台湾で近年活発に進め
   られている。本研究会では、天聖令を含めた唐宋期における令の性質について基礎的研究を行い、唐
   令復原研究および日唐宋令比較研究の新たな視点・手法の構築を目的とした。本研究会は2012年
   12月8日に開催し(於東方学会会議室、参加者7名)、吉永匡史「唐宋期の法制書に引用される「令」
   の性質」、武井紀子「倉庫の出納管理体制とカギ-天聖倉庫令宋24条の検討-」、西本哲也「唐厩牧
   令の条文排列の再検討-駅伝関連条文を中心に-」の3本の報告を行った。吉永報告は、『故唐律疏
   議』や『宋刑統』に引用される各種の「令」について、その性質や編纂年次、引用方法について篇目の
   枠を越えて考察を行った。さらに『唐令拾遺』の復原手法・姿勢を再考することで、唐令条文復原の新
   たな手法・視点を提示した。武井報告では、倉庫門のカギの管理について定める天聖倉庫令宋24条
   を取り上げ、唐倉庫令における倉庫自体のカギ管理規定の存否や、対応する日本令条文(復原8条)
   の内容について検討した。西本報告は、唐厩牧令の条文排列について、天聖令中の不行唐令の順序
   を生かしつつ、動物関連条文群と駅伝関係条文群という2つのまとまりとその論理構成を重視し、宋家
   鈺氏とは異なる排列案を提示した。 本研究会では、法制文献にみえる「令」の性格の基礎研究、唐令
   の条文排列の復原、唐宋令や対応する日本令の個別検討といった様々な観点から、日唐宋における
   「令」の性質を考察した。天聖令が発見・公表された新たな研究段階において、若手研究者が今後取り
   組むべき問題点や研究手法を多く提示・共有することができた。

 4.「アジア世界における古代国家論再考」 (申請者:楯身智志)
   研究会報告
    本会は、一九八〇年前後生まれのアジア史を専攻する若手研究者が集い、特定のテーマをめぐって
   忌憚なく意見を述べ合う場として開催した。今回設定した「国家とは何か」という問題は、歴史学研究を
   推進していく上で避けては通れないテーマであるが、国家に対するイメージは研究対象とする時代・地
   域、あるいは利用する史料やその解釈如何に応じて、玉虫色に変化し得る。ならば、国家と社会を対峙
   させるような見方は本当に妥当なのか。また、若手研究者がそれぞれ国家に対していかなるイメージを
   抱いているのか、そのイメージを互いにぶつけ合ったとき、国家に対するイメージを共有し得るのか否
   か。こうした問題意識の下、本テーマを設定した。  研究会は二〇一三年三月九日(於早稲田大学)に
   開催し、二八名が参加した。楯身智志「古代国家権力論再考」では、上記のテーマ設定の背景につい
   て説明した。福永善隆「漢代における内朝の構造と展開―漢代官僚機構の特質と関連して―」では、
   前漢政治史に重要な役割を果たした内朝の形成が、「官府の重層的連合体」とも称される当時の官僚
   機構全体に与えた影響について分析した。齊藤茂雄「啓民可汗の生き残り戦略―隋・突厥君臣関係
   再考―」では、隋と東突厥の君臣関係について再検討し、両者が単純な支配・被支配ではなく、実際に
   は共生関係とも呼び得る関係にあったことを論じた。武井紀子「日本古代地方支配における“官”と
   “私”」では、唐代律令制と日本古代律令制における「公」・「官」・「私」の概念の相異について分析し、
   日本古代における在地首長層を介した国家の人民支配のあり方を論じた。総合討論では、地域ごとの
   国家イメージの相異や、「国家とは何か」というテーマ設定の困難さなどについて、活発に議論すること
   ができた。 本会を通じて得られた知見は、今後、専攻を異にする若手研究者が共通のテーマの下で
   問題意識を共有していくための大きな糧になるものと期待される。

▲Top

〔平成23年度〕
 
1. 「昌黎会」(申請者: 好川聡)  
   活動報告(『東方学会報』 №.100)
    平成23年4月25日(月)と5月30日(月)に京都大学文学部で開催された「昌黎会」の活動報告を
   いたします。「昌黎会」は、韓愈の全詩訳注の刊行を目的とした研究会で、平成21年の3月に発足
   しました。京都大学の川合康三教授が中心となって毎月開催され、『韓昌黎詩繫年集釈』(上海古籍
   出版社)の編年順に読み進めています。執筆を担当する14名のうち、約半数を若手研究者が占めて
   います。4月の研究会では、『繫年集釈』巻三終わりの「晩泊江口」(担当:川合康三、以下敬称略)、
   「龍移」(川合康三)、「永貞行」(二宮美那子)、「木芙蓉」(好川聡)、5月には巻四始めの「春雪(看雪
   乗清旦…)」(伊崎孝幸)、「春雪(片片駆鴻急…)」(鈴木達明)、「早春雪中聞鶯」(谷口高志)、「和帰
   工部送僧約」(緑川英樹)が検討され、活発な議論が交わされました。今回検討した詩は、韓愈が陽山
   への左遷を量移されて江陵へ赴く道中のものと、法曹参軍として江陵府に着任したときのものです。
   当時の韓愈の複雑な心情を反映してか、難解な表現も多く、担当者が解決しきれないまま提出した箇
   所も多々ありましたが、参加者全員で色々意見を出し合っているうちにおおむね解決することができ
   ました。逆に意見が出すぎてまとまらないこともありましたが、誰もが気兼ねなく意見を言い合える雰
   囲気がこの会の良さであり、今後も訳注の完成に向けて皆で頑張っていきたいと思います。この度の
   助成金は、若手研究者の旅費や、底本の世綵堂本を配付するためのコピー代などに使わせていただ
   きました。 なお、これまでの成果は、原稿の修訂が終わり次第、順次研文出版より刊行される予定で
   す(全五冊予定)。その際は是非御批正の程よろしくお願い申し上げます。
 
 2.. 「中国北宋天聖令を用いた日唐律令制比較の基礎的研究」(申請者:武井紀子)
   活動報告 (『東方学会報』 №.101)
     中国北宋天聖令は、唐令に改訂を加えた北宋代の現行法令に加え、不行の唐令を附載しており、
   日唐律令制比較研究の新たな注目すべき史料として、1999年の発見以来、中国・台湾・日本でそ
   れぞれ研究が進められ、日中で多くの関連シンポジウムが開催されるなど活発な学際的研究分野と
   なっている。本研究会は、天聖令研究の意義や問題点の解明から、新たな日唐律令制比較研究の
   方法論を確立していくことを目指す。以上のような目的のもと、2回の研究会を実施した。 第1回研究
   会(2011年6月11日開催、於東方学会会議室、参加者6名)では、武井紀子「律令制と古代財政
   史」、吉永匡史「律令制と軍事制度研究」の二本の報告を行った。武井報告では、日本古代財政制
   度に関する研究史を整理するとともに、古代財政史における律令制研究の意義と問題点、天聖令研
   究の有用性を指摘した。また吉永報告では、公表された天聖令に含まれていない軍防令の復原につ
   いて、日唐令の比較研究の新たな手法を提示した。 第2回研究会(2011年11月23日開催、於東
   方学会会議室、参加者9名)では、武井紀子「倉庫令条文の淵源について」、吉永匡史「天聖関市令
   と蒲津関」、大津透「袮軍墓誌と日本国号」の報告を行った。武井報告は、倉庫関連法令の淵源を中
   国法典編纂の歴史の中で考えた。吉永報告は、唐代蒲津関の検討を通じて天聖関市令から唐令の
   復原にせまった。大津報告は、近年中国で発掘された百済人袮軍墓誌にみえる「日本」という語の意
   味について検討を行った。本研究会は、天聖令そのものの史料的性格の検討にくわえ、天聖令を用い
   ることによる様々な研究手法をさぐる事を目的とした。2回の研究会を通じて、唐令条文の復原作業、
   天聖令に含まれない篇目内容へのアプローチ、今までの研究史のなかでの律令研究の位置づけ、
   唐代の制度・実態の法的淵源への言及など多岐にわたる方法・問題点を提示できた。

  3.  「若手中国史論壇―コミュニケーション・ヒストリーの試み」(申請者:柿沼陽平)
   活動報告(『東方学会報』 №.102)
    本会は、1980年生前後の若手を中心とする研究会で、若手が相互に研究を紹介し合い、忌憚なく
   意見を述べ合う場である。若手の相互理解を促進し、一定程度の学術交流網の構築に繋がるものと
   期待される。最終目的は、若手同士が今後共同研究を展開しうる余地があるか否か、あるとすればい
   かなるものかを模索することである。当面は、柿沼陽平『中国古代貨幣経済史研究』(汲古書院、20
   11)の提唱する、「人間社会は多種多様なコミュニケーションの上に成り立ち、時代ごと地域ごとに特
   徴をもつ。よって中国史研究でも各時代・各地域のコミュニケーション原理(貨幣経済・贈与交換・家族
   関係等々)と各原理間の相互関係を検討することが重要」との発想に基づく共同研究「コミュニケーショ
   ン・ヒストリー」の可能性を模索する方向で進む予定である。  第1回研究会は、2012年3月4日(於
   東方学会)開催で、24名が参加した。柿沼「コミュニケーション・ヒストリーの試み――交換史観の理
   論的背景――」は題名の理論を説明した。会田大輔「 「梁主」から「島夷」へ―西魏・北周・隋における
   対南朝意識―」は、西魏・北周・隋の中華意識の変容過程を解明するため、諸史料に出てくる南朝表
   現を分析した。三田辰彦「東晋皇帝制度研究序説――皇位継承を中心に――」は、東晋皇帝制度研
   究を整理し、報告者の個別研究を紹介した上で、今後の考察課題として爵制原理・家族原理の整合化
   という問題を提示した。河上麻由子「古代アジア世界の対外交渉と僧侶」は、僧侶の往来を通じて国家
   の政治的意志が伝達されたと推測できる事例を、南北朝~唐代のアジアを対象として調査した。 吉永
   匡史「日唐征討軍の内部秩序と専決権」は日唐軍防令の比較検討を切り口にして、征討軍(行軍)編
   成と内部秩序のあり方を明らかにした。以上、活発かつ有意義な議論が行なわれ、研究細分化に対し
   て共同研究を推進する重要性が確認できた。

▲Top